午前4時の幻想
NY2日目の朝4時。時差ボケで起きたはいいものの、あまり意識がはっきりしません。ふと窓に目をやると、隣のビルでは、まだどの階にも灯りがついています。一生懸命に働くビジネスマンの存在を感じさせました。
私が幼かった頃、夜中の1、2時や朝の3、4時は、自分の世界から人の気配が消える時間でした。夢の中にいるのが当たり前の時間。だから世界も1〜4時を飛ばして翌日を迎えるんだという感覚でした。今でもちょっとだけ神聖な感じのする時間帯なのですが、寝ぼけ眼から見るビルの灯りはなんだか幻のような感じがしました。
香水のあの女性は誰?
8時半にツアーの車が迎えに来るので、ホテル前に出ます。NYの初めての朝のにおいを感じてみたくて、空気を胸いっぱいに吸います。すると、ふわりと香水の香りを後ろ髪に残して、胸元が空いた服を着た女性が目の前を通り過ぎました。思わず付いて行きたいような魅力。こんな一瞬の出来事も映画の一場面みたいに心に残りました。
ビルに挟まれても気にしない
空を見上げると、小さな青空が私を覗きます。青空を遮るビルは上を見ても上を見てもまだ続くくらい高くて、山脈のように連なっています。まるで私たちを板挟みにしようと迫ってきているようで、ぎょっとしてしまいます。でも、目線を自分たちのいる地上に戻してみると、歩道が広々としているからなのか、人々が胸を張って背筋を伸ばして、颯爽と歩いて行く姿が街を活気づけています。ちょっと視点を変えるだけで色んな感情になるので、不思議。
建物はしわを刻む
さて、車に乗り込み、発進!NYってどんな街なんだろう?まだまだ感じられていないことがいっぱいある!人にも、建物にも、街路樹も食い入るように見つめてしまいます。建物1つとっても、奥にいっぱい深みを隠している気がするのです。「私、最近作られたのよ。」と言わんばかりに日光を反射して輝くビルにどこか見覚えがあるなあと感じていると、石やれんがの肌をもつアパートやビルが続きます。その肌には、時間や歴史が刻まれてきたかのように、色が変わっている部分があったり、ちょっと崩れているところがあったり、まるで人の肌が時と共に、優しく厳しくしわを刻むみたい。
今と過去が溶け合うと
そんなふうに思っていると、コロンバスサークルが目の前に現れました。今まで人が働いたり住んだりしている建物の並ぶ道を走っていたのに、突然歴史的な建造物がひょっこりと。何やら文字が記された塔の上には、コロンブスの像が立っているのが見えます。コロンブスのアメリカ初渡航400年周年記念のひとつとして建てられたものだそうです。NYは、経済の世界的中心地として「今」を勝ち残るために一生懸命頑張る街のようなイメージを個人的に持っていましたが、こんなにも自然に「過去」と繋がることができる。今と過去が自然に溶け合っている街だと感じました。