ミス首都大2014高井ひろえの読んだ!観た!感じた!
第35回 「コヨーテ・アグリー」
G・ウェンドコスの脚本を、「アルマゲドン」「フラッシュダンス」のJ・ブラッカイマーが製作。
主人公ヴァイオレットは21歳。ソングライターを夢見て、1人ぼっちでNYへ旅立ちます。
最後にはハッピーエンドを迎えるの彼女ですが、田舎出身で、裕福な家庭でもなく、ピザ屋でバイトをしていました。そんな普通の彼女だからこそ、たくさんの夢見る女の子が自分を重ね合わせ、胸を熱くしました。
NYでの様々な刺激的な出会いを通して主人公がスターの道へ駆け上がる、青春サクセスストーリーです。
それは、あまりにも悲惨なスタート
なんとかNYに来たはいいものの、そこには目を覆うような壮絶な生活が待っていました。
新居は、まるで泥棒が10人連続で入った後のようなひどい部屋。お風呂の水はどぶ色になり、物置としても使えるかどうかです。
早速部屋で歌い始めると、隣の部屋から罵声があびせられます。
翌日、デモテープをレコード会社に渡そうと走り回るも、無名のヴァイオレットは一切相手にされません。
業界人が多く集まるといわれるクラブでチャンスを掴んだと思うも束の間、デモテープを渡した相手は、大物などではなく、レストランのコックだったと分かります。騙されたことに傷つくヴァイオレット。
肩を落として帰宅すると、そこにはとんでもない光景がひろがっていたのです。
ヴァイオレットは悲しい。観客は楽しみ。
ここで、視点を、ヴァイオレットから、映画を観ている観客へと、変えてみましょう。
ほとんどの人が、ハッピーエンドになると分かった上でこの映画を観ているんですよね。ヴァイオレットは、必ず最後には幸せになるんです。
極端な話、
(1)裕福な家庭に育ち、NYの綺麗なアパートに住み、一生懸命練習を重ねて、最後には親の紹介で大舞台に立ち幸せになる女の子。
(2)裕福でない家庭に育ち、NYでひどい体験をしながらも、一生懸命練習を重ね、最後には大舞台に立ち幸せになる女の子。
だったら、(2)の方がきっと観ていておもしろいです。主人公が辛い思いを重ねれば重ねるほど、その思い出に比例して、ハッピーエンドのときの感動が何倍にも膨らむからです。
シンデレラの結末で、なぜ、あの何とも言えない感動を味わうのでしょうか?シンデレラが、王子様の持ってきたガラスの靴をはいたとき、彼女が報われた喜びを観客は一緒にかみしめます。それは、いじわるな継母たちにひどいことをされ続けても、前向きに頑張り続けた屈辱の時があったからです。
このように、主人公は、派手なスタートを切る必要はないんです。むしろ、辛くても地道な努力を経れば経るほど、報われた時の喜びはより深みのあるものになります。
ヴァイオレットがどん底にいるとき、きっと観客は思っています。
「こんなにひどい経験を積んでいるのだから、最後にどんなに幸せになれるのか、楽しみだ。」
あなたが今辛いなら、それはきっと
もしあなたが何かを成し遂げようとしていて、今とてつもなく大きい壁にぶつかっているなら、それはサクセスストーリーの途中だからなのかもしれません。
あなたの物語に、観客がいるとしたら、きっとこう思っています。
「落ち込むのは今だけなんだよ。最後は、大成功するのだから!!」