お昼ご飯の誘惑
お昼時も少し過ぎてお腹がぺこぺこになった私のもとに、道沿いの屋台のデリのいい匂いが漂います。
スムージーや野菜の屋台もあり、こっちへおいでよと言わんばかりだったのですが、誘惑を振り切って、ずっと訪れたかった鉄板焼きのお店へ。
実は映画のギャグ要素にもなっていたレストラン
その名も「ベニハナオブトーキョー」。1階はまるで比較的高級なバーのような落ち着いた雰囲気があったのですが、階段をのぼるにつれて愉快な笑い声や、金属音が大きくなり、活気を温度で感じます。2階に着くと、ぱっと目に付いたのはシェフの真っ赤な帽子。そして手元のせわしく機敏な動き。
その時デジャヴのように、とある光景を思い出しました。それは、ウォール街を舞台にしたレオナルド・ディカプリオ主演の映画「ウルフオブウォールストリート」の一場面。主人公がFBIに拘引されるきっかけが、まさに「日本料理店」ベニハナ会長ロッキー青木のインサイダー事件に絡む麻薬取引疑惑だったのです。そこで、ベニハナのシェフが料理をしている映像が流れるのです。「日本」と強調しているのにも関わらず、日本人のイメージする「日本料理店」の落ち着いた雰囲気とはかけ離れた派手なパフォーマンスが行われるというギャップがおもしろいと思いました。そして、それは私の目の前で行われてることになるのです。。。。
1つ1つが見逃せない魅せどころ
まず、私の他に2組のお客さんと、同じテーブルにて、鉄板を前にしたシェフを囲んで座らされます。みんなお互いに知らない人同士という状況の中、シェフの自己紹介が始まります。このテーブルの雰囲気は、すべて彼がにぎっている。両手のへらでリズムを取り始めたかと思いきや、慣れた手つきで油を敷きます。ここからは料理を作るすべての過程がパフォーマンスです。鉄板との距離が近く、油がこちらにじゅうっと飛んできそうな臨場感。
鉄板の上では何もかもがシェフの思うまま。卵が私の目の前まで転がってきたと思い眺めていると、シェフはニヤリと笑って、卵を空中に投げた後にへらで真っ二つに割り、黄色いにわとりを出現させます。
「chicken come!!」と言おうとした瞬間、ニワトリは無残にも姿を消し、ご飯とリズミカルに混ぜ合わされ、ハート型のチャーハンになりました。
「I love benihana too…」と口にしようとすると、次はハートが豪快に真ん中から破壊され、お茶碗に盛られて運ばれてきました。
パフォーマーでありシェフである人にとって大切な事
熱い鉄板の上では、焦げないようにするためにタイムリミットがあり、さらに観客はめまぐるしい変化による刺激を求めているのでスピード感が大事。さらに競争の激しいNYでは、味も求められるので、美味しく仕上げなければなりません。鉄板の上で最高のショーを繰り広げるために、一番の肝となっているのはきっと綿密な段取りです。
コース料理が終了するまで、シェフはテーブルから離れません。すべての食材を手の届くところに置き、さらに場所を把握しておかなければなりません。「ベニハナ」を代表的な日本料理店にしているのは、目に見えない下準備なのだと感じました。